飲食店で叫ばれる人手不足。年々深刻化しています。小さな飲食店でも人が集まる採用と育成術を紹介します。
飲食店の人手不足の現状
2025年現在、日本の飲食店（レストラン・居酒屋・カフェなど）は依然として深刻な人手不足に直面しています。特に非正規雇用といわれる アルバイトやパートの不足が顕著で、7割を超える飲食店が人手不足を訴えています。飲食店における人手不足は、サービスの質の低下や従業員の負担増、ひいては閉店に追い込まれる店舗も出るなど、経営に深刻な影響を与えています。
飲食店の人手不足の背景と原因
労働人口の減少と高齢化
少子高齢化が労働力を減少させ、今後さらに深刻化が予測されています。2040年には最大で1,100万人の労働力不足が生じる可能性があります。飲食業界のイメージや労働環境への懸念から、求職者が集まりにくい状況です。
業界特有の過酷な労働環境
長時間労働、不規則なシフト、給与の低さ、キャリアパスの不透明さなどの労働条件に対する不満が若年層の飲食業離れを促し、離職率の高さにつながっているといえます。
コロナ禍の影響と回復過程
感染対策による営業制限で従業員が他業種へ流出し、回復期に求職者が戻らず、回復が遅れています。特に2023年までは深刻な人材の喪失となりました。その後、需要が回復した際に十分な人員を確保できない状況を生み出しています。
インバウンドや観光需要の増加
観光客の増加に伴い、飲食店の需要は高まっていますが、それに伴う人手不足も深刻化しています。訪日客と国内観光の回復に伴う需要増が、人手不足をさらに顕在化させています。2030年には観光分野での人手不足が50万人以上に達すると予測されています。
飲食店の人手不足による影響
価格の上昇
労働コストの上昇圧力により、価格転嫁が進行中ですすき家、吉野家、スカイラークなどでも値上げ傾向が見られるようになりました。
サービス品質の低下
注文取り・配膳・片付けに時間がかかり、接客がおろそかになったりするなどから、顧客の満足度低下につながるケースが増加中です。サービスの質が低下する可能性があります。
営業時間・営業形態の縮小・変更
インバウンド対応やピーク時人員確保が難しく、営業時間短縮やメニュー縮小、宅配・テイクアウトへのシフトが進んでいます。
店舗の閉店
人手不足が深刻化すると、店舗の営業を継続することが困難になり、閉店に追い込まれるケースも出てきます。
小さな飲食店でもできる採用・育成術
飲食店における人手不足は小さな飲食店でも同様の悩みです。小さな飲食店でも実践できる「採用」と「育成」の工夫は、大手にはない“強み”を活かすことがカギとなるでしょう。低コストかつ実行しやすい方法を紹介します。
採用
小さな飲食店でも人が集まる工夫を考えます。
お店の「魅力」を発信
SNSや求人票で「どんな人が働いているか」「働きやすさ」「オーナーの想い」を発信しましょう。InstagramやTwitterなどのSNSを活用し、お店の雰囲気やスタッフの様子、イベント情報などを積極的に発信することで、お店の魅力を伝え、応募者の興味を引くことができます。
例：「学生さん歓迎」「まかない無料」「週1〜OK」など、他より“人間味”や“安心感”を打ち出します。
ポイント：写真や動画で“人間関係のよさ”を見せると効果的です。
地元採用の強化
ターゲット層に合った求人媒体を使い分けましょう。店頭ポスター、レジ横でのチラシ掲示、商店街掲示板などリアル求人も有効です。
例：「この辺でバイト探してる人いない？」とお客さんやご近所に声がけするのも効果的です。
ポイント：主婦層・学生などは「徒歩圏内・知り合いの紹介」で決めるケースが多いです。
応募ハードルを下げる
曜日・時間の自由度を明記しましょう。また面接不要の「見学歓迎」制度でみてから決めてもらうという方法も人気があります。
例：「1日2時間OK」「週1回だけOK」など、無理なく始められそうな内容にします。
ポイント：SNSに強い若者向けに、LINE応募やSNS DM応募なども検討してもいいかもしれません。
リファラル（紹介）制度
既存スタッフからの紹介に、まかないグレードアップ、クオカードなどのインセンティブを付与します。
ポイント：「知り合いと一緒に働ける」が安心感につながります。
育成
すぐに辞めず、ちゃんと育つ仕組みを考えます。
教える人を1人に決める（育て親 制度）
スタッフが複数いる場合は、「この人が育て役」と役割を明確に。マニュアルより「人」で教える方が理解が深まり、心理的安全性も高い。現場での実践的な指導に加え、外部研修やセミナーへの参加を促すことで、従業員のスキルアップを支援します。
細かいことはマニュアル化
レジ締めやドリンクの作り方、掃除の順番などは、紙1枚の「やり方ガイド」を貼っておくと、わからなくなった場合でも聞かずに確認することができます。写真つき手順書や「よくある質問ノート」も便利です。また動画をスマホで撮っておけば、教える手間も省けます。
初日〜1週間のステップを決める
「初日は接客せず、裏方だけ」「1週間後にレジ練習」など、段階的に育てます。スタッフが将来の目標を明確に描けるように、キャリアパスを提示することで、モチベーションを高めます。成長感を味わってもらえる工夫も効果的です。スタッフの頑張りを適切に評価することで、さらなる成長を促します。
褒める・感謝する文化をつくる
「ありがとう」を口に出す、「〇〇さんの声かけ助かったよ」など具体的に感謝するといいでしょう。小さな職場だからこそ、承認がやる気につながります。
まとめ
求人戦略の見直し、労働環境の改善、業務効率化、そして従業員の育成に力を入れることが重要です。「誰でも来てほしい」ではなく、「こんな人と働きたい」を明確にすることが重要です。教えたり育てたりすることは投資をとらえ、辞められない関係性をつくるのがカギです。小さい飲食店こそ“個人対応力”が強みなのです。
