インバウンド需要が増えている近年、飲食店ではどのような対策をとることが望まれているのでしょうか。
インバウンドとは
インバウンドはInboundと書き、訪日外国人観光客、つまり日本を訪れる外国人の旅行や観光活動を指します。2003年、日本国政府は観光立国を掲げて、訪日外国人旅行者1000万人を目標とする、ビジット・ジャパン・キャンペーンを策定しました。観光ビザの発給要件緩和などに取り組んだり、アベノミクスといった経済政策によって、歴史的なドル安円高が解消されたり、格安航空会社の就航拡大のなどの背景もあって、2019年には、過去最高となる年間、3188万人に到達しました。
観光業や経済の分野では、インバウンド観光客の増加が地域経済の活性化や、観光資源の利用促進に重要とされており、各地でインバウンド誘致のためのマーケティングやプロモーションがおこなわれています。また、ビジネスやマーケティングの文脈で、インバウンドは、広告や営業活動ではなく、ユーザー自身が情報を検索して商品やサービスにたどり着くプロセスを指し、ブログやSNS、SEOなどを活用してユーザーの関心を引く方法も含まれます。そのため、文脈によって意味が異なりますが、観光業やマーケティングなど、幅広い分野で使用されている言葉です。
インバウンド消費
訪日外国人観光客による日本国内での消費活動を指す観光用語となります。現在では、訪日観光客の増加に伴い、国内消費を支える存在にまで拡大しており、さまざまなところでインバウンド消費やインバウンド需要に注目しており、さまざまな対策がとられています。日本では人口が減少傾向にあります。国内の消費には限界がきてしまい、国内だけをターゲットにしていては売り上げにつながらないといったことが予想されます。
飲食店におけるインバウンド効果とは
訪日外国人観光客が飲食店を利用することで得られる経済的・社会的なメリットとして以下があげられます。
売上の増加
観光客が来店することで、飲食店の売上が増加します。観光客は普段の地域住民と異なるニーズや食文化を持っているため、高価格帯の商品や、地域の特産物を使用したメニューが人気になることもあります。
地域活性化と雇用創出
飲食店での消費が地域経済に貢献し、他の宿泊業や小売業などの観光業も活性化します。外国語対応ができるスタッフや多言語メニューが求められるようになるため、雇用の拡大や人材育成にもつながります。
日本食文化の発信とブランド力向上
観光客に日本食や地域の特産品を提供することで、食文化を海外に広める機会が増えます。SNSなどで観光客が日本での食体験を発信することにより、日本や地域のブランド力が向上します。
多言語対応やサービス向上の機会
インバウンド対応をするために、多言語メニューやキャッシュレス決済、アレルギー情報の表示などを整備することで、観光客だけでなく国内の利用者にも使いやすい環境が整います。
これらのインバウンド効果によって、飲食店は訪日外国人観光客の需要を取り込むだけでなく、地域全体の価値を高める役割を担うことができるようになります。
飲食店におけるインバウンド対策
訪日外国人観光客が快適に飲食を楽しめるような工夫をすることをインバウンド対策といいます。
多言語メニューの提供
英語、中国語、韓国語など、主要な言語でメニューを提供することが大切です。アレルギー情報や成分の説明も加えると、より安心して注文できます。QRコードを使い、オンラインで多言語メニューを表示する方法も便利です。
キャッシュレス決済対応
観光客が利用しやすいように、クレジットカードやモバイル決済(AlipayやWeChat Payなど)に対応することで、支払いがスムーズになり満足度が向上します。
無料Wi-Fiの提供
外国人観光客にとって無料Wi-Fiは重要なサービスの一つです。SNSでの口コミ拡散効果も期待でき、利用者の満足度向上にもつながります。
スタッフの多言語対応
英語などで簡単な対応ができるスタッフがいると、観光客は安心して利用できます。スタッフに言語別の基本表現や接客用語を教えたり、スマホやタブレットで翻訳アプリを活用するのも効果的です。
ベジタリアン・ヴィーガン対応やアレルギー表示
ベジタリアンやヴィーガン対応のメニュー、アレルギー情報の明記など、多様な食文化や健康志向に配慮した対応も求められます。最近はハラール対応を求められることも増えてきています。
SNSを活用した情報発信
SNSを通じて、観光客が興味を持ちやすいメニューや店舗の雰囲気を発信します。人気のハッシュタグや位置情報をつけることで、観光客が店舗情報を見つけやすくなり、集客につながります。
観光地に近い立地や交通情報の案内
観光地周辺の飲食店では、近隣の観光スポットやアクセス情報を提供することで、観光客が訪れやすくなります。店舗に近い観光地やおすすめスポットも紹介すると喜ばれることがあります。
これらのインバウンド対策を講じることで、外国人観光客にとって魅力的で利用しやすい環境を提供でき、リピーターやSNSを通じた口コミによる新規集客にもつながります。
まとめ
2024年8月の訪日外国人旅行者数は2019年比16.4%増の293万3000人と7カ月連続で過去最高を記録しています。2023年比では36.0%増と今後も増える傾向にあることがわかります。中国からは74万人で最多となっており、次いで、韓国からは61万人、台湾56万人、香港24万人、米国が17万人となっています。日本国内だけでなく、海外からの観光客に目を向けてインバウンド対策を心がけることで、売り上げアップにつなげることができます。