店舗内装をはじめたきっかけ
「店舗の設計施工ってクリエイティブでかっこいい」
そんな安易な考えでこの業界に飛び込みました。デザインとか現場監理とか職業としてのイメージも良かったので・・・。
ものづくりに興味があった私はどうせやるなら自由に面白く物造りができるなどと安易に考えてこの職業に就きました。
特に飲食店についてはチェーン店以外は全く同じものがなく、どのお店もオリジナルなものばかりで運営するお客様と楽しく打合せして面白いものを造っているというイメージしか持っていませんでした。その時はそれを造るのに「誰が?どの部分を?どの材料で?どのように?いつまでに?」など考えることすらありませんでした。
厳しい現実
いざ飛び込んでみると会話が専門用語ばかり。期限も予算も品質も厳格なルールがあり、また施工現場に行くと、怖そうな体格のよい職人さんたちがピリピリしながら作業をしていて、声をかけてもぶっきらぼうに答えるだけで全員が怒って仕事をしているようでしたので、想像していたものとはかなりのギャップがあり、いざ工事が始まってもただ見ているだけで、確認や相談もできない状況でした。
工事が始まると、施工現場はいつも緊張感があり、またどんどん工事が進むので現場の様相が毎日変わっていき、工事の間違えや変更箇所などの修正がされていないと気が付いた時にはすでに次の工事が進んでいて工事を止めてやり直すことなどもあり、あたふたしながら工事現場から離れられない状況にいた記憶があります。
その当時の私は、常に工事費用(予算)・工事期間(工期)・工事内容(品質)の3つの工事を施工するたびにバランスが取れずに常に不安と緊張が私につきまとい、仕事に対しても面白さを見いだせず、毎日悩んでいたように思います。
そんな中にもお客様から「頼んでよかった」「いい仕事をしてくれてありがとう」などと言っていただけることもあり、それから知識と経験を増やすために、朝一番で施工現場に張り付いて職人さんが作業するのを見て、施工方法や注意点などを吸収し、徐々に工事の内容を覚えていきました。そして大事な部分については事前にお客様へ正直に、工事内容を説明し承諾を得ながら工事を進めていくことを覚えていきました。
今思えば「求めていることが分からない。分からないことが分からない。と言い訳をして逃げていたのだと思います。」
葛藤と出会い
それからはお客様の求めているものをとにかくヒアリングし、分からないことは職人さんにすぐに相談する。そして自分の言葉でお客様に説明して承諾を得る。今でも同じですが、これの繰り返し行う作業を徹底しました。
ただ困ったことに飲食店の施工に関する教科書がなく、どういう施工すれば正解なのかだれにも教えてもらえず、設計士と呼ばれる方々に相談しても特殊過ぎて明確な回答を得ることはできませんでした。
当時の私は知識不足もあり、対応できる有能な職人さんとは予算が合わず、また経験の浅い職人さんでは品質が落ちる。とまた新たな悩みに頭を抱えることになりました。
その際に救っていただいたのが、当時親しくさせていただいた電気業者さんでした。年齢も近く、若くして独立していたため色々な経験があり、私にとってはとても相談しやすい職人さんでした。
それをきっかけにいい職人さんの見分け方や現場内でのルール、経験のない施工方法のアドバイスなど、電気とは関係のない範囲まで相談に乗って頂きました。私たちが目指す施工を現場の他の職人さんに共有させていただいたりたくさんの協力をして頂きました。
ちなみに今でもその方には現場に入って頂いております。感謝しかないです。
店舗内装への熱い想いと使命感
一般的には建築作業現場はどこでも一緒かと思いますが、一業種一社しか現場には入らず、別業種の職人さんとのいわば駅伝みたいなリレーのような作業を繋げて施工完了となります。誰かが自分勝手な施工をしたり、や工程をずらしたりするとその後に施工する職人さんに迷惑がかかり、予定していた工事時期と工事内容の品質低下のリスクが伴います。
一つの箇所がうまくいかないとお客様はその他がすべてうまくいってもどうしても残念な気持ちが先行してしまうので職人さんたちが完成に向けて一丸となってよいお店をつくる気持ちを統率することが私の使命と考えるようになりました。
先程も述べましたが一業種一社の熟練した職人さん達をまとめることは経験の浅く年齢も年下の自分には非常に難しくとても苦労しましたし、立ち向かうのにはその職人さん達の仕事の良し悪しを判断するだけの知識を養うことも同じくらい苦労しました。
ただそうした自分をやさしく受け止めてくださった職人さんには気持ちの良い仕事をして頂くための準備は怠らないように努力したつもりです。こういった思いが出来上がりに反映すると職人さん達も認めていただきお互い言いたいことを言えるような関係が築けたかと思います。
さいごに
人は一人では生きていけない。とどこかで聞いた言葉ですが、本当にそう思いました。
飲食店は「接客が命」と言われるくらい対面での受け答えが問われる職業です。私達も飲食店で食事をする際にあたりまえにそういったお仕事で独立されるお客様の命を受けて私達がお店を造り、その場所で接客され食事が提供される。こういった繋がりもとても責任を感じる仕事ですし、失敗ももちろんできませんので慎重に職人さん達に伝達して施工してもらう。こういった繋がりが大変であり、とても充実する仕事だと思います。改めて飲食店の内装工事というものは大変責任の重い工事だと思いました。
衛生面を重視する空間の為、清潔感はもちろん、居心地の良い空間づくり・作業性のより厨房配置・快適かつ耐久性のある厨房室造作。また火や水を大量に使用する厨房室においては安全性も配慮しなければならないので機器等の特徴なども配慮しなければならないので十分に配慮し施工する必要があり、また使用するお客様にも危険性を十分に説明する必要があるとても責任が重い職業だと改めて痛感しております。
店舗施工は住宅の施工と違い家賃が発生したり、オープン日を事前に告知したりと時間の軸が優先されることも多くあり、段取りや判断についても是非を問われる業界でもあります。その限られた時間軸の中で工事費用(予算軸)と施工品質(施工軸)をバランスよくコントロールして進めるこの仕事はとても責任があり、やりがいのある仕事だと思っています。
私達のお客様はすでに経営をしている方かこれから経営をしていく方々で、私達よりも知識も経験を豊富な方々です。そのような方達と一緒にお店造りに携わらせていただくことはその都度勉強になり、またよい経験もさせていただいております。
特に飲食業界で経営をされている方は常に商品や営業スタイルを模索している方が多いのでそのお話に追いついていくには私達も日々情報に敏感でなければなりません。「手間暇かけて安価で丁寧に物を造る」という点ではお客様と同じ視野で仕事というものに挑んでますのでお客様の気持ちにきちんと応えられるようにこれからも頑張っていきたいと思います。
これからも安全・安心・安価を追及して参ります。よろしくお願い申し上げます